
ものづくり補助金には個人事業主も申請できるの?

個人事業主の方は、ものづくり補助金に応募できます。
1. 個人事業主の採択率は?
採択結果より、おおむね採択者全体のうち1割程度を個人事業主が占めていることがわかります。個人事業主の応募数がわからないため採択率はわかりませんが、参考にしてみてください。
13次締切 | 14次締切 | 15次締切 | 16次締切 | |
全採択者数 | 1,903 | 2,470 | 2,861 | 2,738 |
(うち個人事業主数) | 202 | 223 | 280 | 251 |
個人事業主の占める比率 | 10.6% | 9.0% | 9.8% | 9.2% |
2. 個人事業主向け!ものづくり補助金申請で失敗しない準備のコツ
ものづくり補助金は、個人事業主が新しい事業を展開する際に活用できる有力な支援制度です。しかし、申請準備が不足していると採択されないことも少なくありません。ここでは、失敗しないための準備のコツを解説します。
(1) 必要書類の事前準備
ものづくり補助金の申請では、主に以下の書類が必要です。
- 事業計画書
- 確定申告書
- 賃金引上げ計画書
- 補助経費の誓約書
これらの書類を早めに揃え、チェックリストで確認することをおすすめします。
書類準備に加え、この段階で重要なのが、付加価値と給与支給総額を確認・把握することです。補助金の申請には、付加価値(年平均3%以上)と給与支給総額(年平均1.5%以上)を向上させる事業計画を作成する必要があります。
事業計画作成の前に、現状(直近の確定申告済の値)を把握し、将来的にどの程度の給与アップが可能かどうか検討しておきましょう。
個人事業主の付加価値および給与支給総額は、青色申告決算書で確認できます。

付加価値は、次の式で求めることができます。
付加価値=営業利益(差引金額㉝+利子割引料㉒)+減価償却費⑱ +福利厚生費⑲ +給料賃金⑳
給与支給総額は、次の式で求めることができます。
給与支給総額=給料賃金⑳+専従者給与㊳+青色申告特別控除前の所得金額㊸
最新の青色申告決算書より、現状の付加価値額および給与支給総額を確認しておきましょう。
(2) 事業計画書の具体化
事業計画書は審査で最も重要な書類です。事業の背景、目的、取り組む内容、期待される成果を具体的に記載します。例えば、新しい設備導入でどの程度の生産性向上が見込めるのかを数値で示すことが求められます。
以下は、採択された方の事業目的と効果です。目的と効果を明確に示すことが重要といえます。
- 洋菓子店
◼️事業目的:最新の食品自動製造機械の導入による省人化と焼菓子の生産性向上
◼️効果:①工程の一部を自動化、全体の製造時間を従来比約3割削減、② 設備導入による省人化で生まれた人員を新たなスイーツ開発へ
- 都市鉱山リサイクル業
◼️事業目的:廃基板のグローバル調達体制の拡充と廃基板破砕の加工業化による循環型社会構築への貢献
◼️効果:競争力及び総合力の向上により自社の信頼度が増し、海外の優良なパートナーとの業務提携の優位性を獲得
- コメの卸・販売業
◼️事業目的:精米ラインの品質向上と能力向上
◼️効果:精米ラインの能力増と、見栄えと旨味アップにより出荷急増。
- 分析装置製造業
◼️事業目的:テレビ会議を活用した分析装置「AATM 1」の非対面による販売モデルの構築
◼️効果:テレビ会議システムを活用した非対面による販売モデルを構築することで、AATM 装置のブラッシュアップにも貢献。
- デニム加工業
◼️事業目的:ナノバブルを活用し環境に配慮した革命的生産プロセスの確立
◼️効果:古着風が特徴の「ナノミスト加工」確立し、古着ブームで追い風を成長機会に捉える。
出典:ものづくり補助金公式サイト「2023年度グッドプラクティス集」
(3) 資金計画を明確にする
ものづくり補助金は後払い形式です。そのため、事業を始める前に自己資金や融資を確保しておく必要があります。金融機関と連携して資金調達の計画を立てましょう。
法人に比べ、個人事業主は資金面での不安が多いのが一般的ですので、審査する側も資金調達に関して厳格にチェックすると思われます。金融機関に早めに相談することをお勧めします。
(4) 申請スケジュールを管理する
申請締切を過ぎると申請が無効になります。電子申請システムの操作に慣れつつ、余裕を持って書類作成を進めましょう。
事前準備を徹底すれば、ものづくり補助金の採択率を高められます。しっかりとした計画が、個人事業主にとっての成功への鍵です。
3. ものづくり補助金の対象経費と審査基準を徹底解説
ものづくり補助金では、新しい事業を支援するための幅広い経費が補助対象となります。ここでは、対象となる具体的な経費と最新の審査基準について詳しく解説します。
(1) 対象経費の詳細
以下のような経費が、ものづくり補助金の対象として認められます。
- 機械装置費:機械・装置の購入や専用ソフトウェア・情報システムの購入に要する経費。
- 技術導入費:知的財産権等の導入に要する経費。
- 外注費:新製品・サービスの開発に必要な加工や設計等の一部を外注する場合の経費。
- 原材料費:試作品の開発に必要な原材料などの購入に要する経費
- 知的財産関連費用:特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用等。
- クラウドサービス利用費:業務効率化を図るためのクラウドサービス料金。
これらの経費を正確に計上し、事業計画書に反映させることが重要です。
(2) 審査基準
審査基準は主に以下の3つの視点から評価されます。
- 技術面:新規性や独自性があるかどうか。課題や目標が明確であるか。
- 事業化面:事業の実現可能性と、計画の具体性。
- 政策面:地域経済や環境への貢献度。
例えば、地域密着型のサービスや、環境に配慮した事業は政策面で高評価を得やすいです。
審査基準をしっかり理解し、具体的な数値や取り組み内容を示すことで、採択率を高めることができます。
個人事業主なので、1,000万円以上の大規模な投資はしないケースがほとんどです。資本力のある企業と比較して差別化できるかなど、事業の革新性で勝負する必要があります。もし大きい投資をするのであれば、現状の事業規模に見合っているか、段階的な投資に分けることができないか、検討しましょう。
4. 採択率を上げる加点項目の活用法と具体的事例
ものづくり補助金の審査では、「加点項目」を活用することで採択率を高めることができます。以下では、加点項目の内容と活用法を具体的な事例とともに解説します。
(1) 主な加点項目
- 事業継続力強化計画の認定:災害や感染症への備えが評価されます。
- 地域経済への貢献:地域の特性を活かした事業や雇用創出が対象です。
- 創業・第二創業:創業5年以内の事業者が対象。
- 環境配慮型事業:省エネや廃棄物削減を目指す取り組み。
これらを活用することで、審査での評価を高めることができます。個人事業主の場合、法人と比較して資金力等で劣っている場合が多いので加点項目をとるのが重要です。特に創業5年以内の事業者は自動的に加点を1つ得ることができます。
16次では14の加点項目があり、最大6項目の加点が可能です。
(2) 加点項目を活用する方法
加点対象となる条件を事業計画書に反映します。例えば、「事業継続力強化計画を申請済み」や「地域の雇用を拡大予定」といった具体的な取り組みを記載します。審査員にアピールするため、取り組み内容を数値化することが効果的です。
加点項目を活用すれば、個人事業主でも採択率を高められます。該当項目を確認し、事業計画にしっかり組み込んで申請しましょう。
(3) 加点項目の活用事例
事業継続力強化計画
・ 卸売業事務所周辺のハザードマップをきちんと把握しておらず、南海トラフ地震に対しての防災対策を中心行っていた。地震以外に台風等の大雨の際に2.0m程度の浸水が発生するエリアであることを知り、情報系のサーバーを2階へ移動させる対策を実施した
・ 洗濯業大雨による床上浸水のリスクがあることを知り、機械設備を保険に加入した。また重要な情報としてレジの売上データのバックアップを取っている。
パートナーシップ構築宣言
・ 建設業
大工に、サラリーマンの有給休暇のような、『日当の出る休み』を提案した(有給休暇付与)。その結果、職人との関係性はよくなっており、職人離れを防ぐことに寄与している。
・ 金属部品加工業
「AI搭載画像判別センサ」を用いた検査を実施している。検査を協力企業まで拡大したいが、協力企業での導入は負担が大きい。そこで協力企業にはカメラとコンベアを導入し、AI画像識別は自社で実施することで不具合流出件数の削減につなげた。
5. まとめ
以上、個人事業主がものづくり補助金に申請する際に、採択率を高める方法について紹介しました。
もし、専門家とともに、事業計画書のブラッシュアップや、作成に取り組みたいかたは、こちらからお気軽にご連絡ください。