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「経営力向上計画」を作成する際には、さまざまな経営分析指標を活用することが求められます。
そこで「経営力向上計画」作成に役立つ経営指標として、今回は「自己資本比率」について解説します。
自己資本比率とは、企業が保有する資産のうち、返済義務のない自己資本が占める比率をいいます。具体的には、次のように計算します。
$$自己資本比率(%) =\frac{自己資本}{総資本}×100$$
$$=\frac{自己資本}{負債+自己資本}×100$$
この比率が高ければ高いほど、その企業は財務的に安全だといえます。
では、貸借対照表を見ながらその意味を考えてみましょう。
目次
- 貸借対照表と自己資本
- 負債が多いと…
- 自己資本比率が100%なら問題ないのか?
貸借対照表と自己資本
大まかに言うと、貸借対照表は次のような構造になっています。
貸借対照表の右側には、負債項目と純資産項目が並びます。負債は借入金のように、将来において返済義務のある資金調達源泉を表し、純資産は資本金のように、返済義務のない資金調達源泉を表します。なお、自己資本は純資産とほぼ同じものとお考えください。
一方、貸借対照表の左側には、資産項目が並んでいます。現金や預金、商品、建物、土地など、企業が保有する資産をすべて記載します。言い換えれば、負債や純資産により調達した資金をどのような形態で保有しているか(資金運用形態)を表すのが、貸借対照表の左側であるといえます。
負債が多いと…
たとえば、A社の資産が10億円で、そのうち8億円は負債で資金を調達し、残り2億円は自己資本で調達しているとします。すると、自己資本比率は、
$$自己資本比率(%) =\frac{自己資本2億円}{負債8億円+自己資本2億円}×100$$
=20%
となります。
先ほど申し上げたとおり、負債は返済義務のある資金調達源泉です。もし、この8億円の負債を5年後に全額返済しなければならないとすると、貸借対照表はどうなるでしょうか?
当然、負債はゼロになるのですが、返済にあたって8億円の現金や預金がなくなるため、残りの資産は2億円になってしまいます。
つまり、負債で多額の資金調達している場合は、同額の資産が将来なくなるということを意識して経営しなければなりません。自己資本で資金調達していればこのようなことはないので、負債が多いほど財務的に不安定であるといえます。
逆に、自己資本比率が高ければ財務的には安定していることになります(これを“安全性が高い”と表現します)。当然銀行からすれば、安全性が高い企業に貸し出したいと思うでしょう。
自己資本比率が100%なら問題ないのか?
さて、以上の話を踏まえると「負債は悪!」みたいなイメージが付いてしまうかもしれません。でも、そうではないのです。
製造業などでは、多額の設備投資は避けられないでしょう。しかし、中小企業の株式は市場に流通していないため、自己資本により資金調達することは、極めて難しいです。そのため、資金調達源泉は自ずと負債(借入金)にならざるを得ません。中小企業にとって、負債は必要不可欠なのです。
大事なのは、設備投資をした後のキャッシュフロー計画です。数年かかっても、借入額を上回るキャッシュフローを獲得できる見込みがあるのなら、借入れしてでも設備投資を行い、事業拡大を目指すべきです。反対に、無計画な借入れは慎まなければなりませんね。
まとめ
基本的に、自己資本比率は高いほうが良いのですが、事業拡大のためには負債が必要な場合もあります。借入れをするときは、その後のキャッシュフロー計画をしっかり立てましょう。