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「経営力向上計画」を作成する際には、さまざまな経営分析指標を活用することが求められます。そこで「経営力向上計画」作成に役立つ経営指標として、今回は「EBITDA有利子負債倍率」について解説します。
- EBITDAを計算する意味とは?
- EBITDA有利子負債倍率の計算方法
- EBITDA有利子負債倍率は有利子負債の返済能力を表す
EBITDAを計算する意味とは?
EBITDA(イービットディーエー)と言われても、ピンと来ないかもしれませんね。これは、”Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization”の略で、「利息・税金・減価償却費等を控除する前の利益」という意味です。
営業利益とも、経常利益とも異なり、損益計算書には直接表示されません。
正確に求めるときは、
EBITDA=税引前当期純利益+特別損益+支払利息+減価償却費
と計算しますが、
EBITDA=営業利益+減価償却費
とすれば概算できます。
では、このような利益を計算する意味はどこにあるのでしょうか?
たとえば、減価償却費は経費の中でも大きな割合を占めることがあります。特に、新しい設備を導入したばかりだと、金額も大きくなります。
前期 | 後期 | |
---|---|---|
売上高 | 10,000万円 | 10,000万円 |
減価償却費以外の経費 | △7,000万円 | △7,000万円 |
減価償却費 | △500万円 | △2,000万円 |
営業利益 | 2,500万円 | 1,000万円 |
減価償却費控除前の利益 | 3,000万円 | 3,000万円 |
上のように、前期と当期で、売上高と減価償却費以外の経費が同額だとしても、新しい設備の導入により当期の減価償却費が多額に上った場合、当期の営業利益は小さくなってしまいます。
減価償却費を除けば、前期と同じだけ儲かっているのですから、「本業の収益性をより公正に比較したい」ときは、減価償却費控除前の利益を用いるべきです。
このことは、支払利息や税金についても同じことがいえます。借入れをしているかどうか、あるいは税金がいくらになるかということは、本業の収益性とは全く関係のないことです。
したがって、EBITDAは本業の収益性を公正に測るために打ってつけの指標であるといえます。
EBITDA有利子負債倍率の計算方法
さて、本題に入りましょう。EBITDA有利子負債倍率は、次のように計算します。
$$EBITDA有利子負債倍率 =\frac{借入金-現預金}{営業利益+減価償却費(EBITDA)}×100$$
これで何を計算しているのかというと、「すぐに返済できない借入金(=借入金-現預金)がEBITDAの何年分あるか」ということです。
前々期 | 前期 | 当期 | |
---|---|---|---|
借入金 | 20,000万円 | 17,000万円 | 14,000万円 |
現預金 | 2,000万円 | 2,000万円 | 2,000万円 |
差引 | 18,000万円 | 15,000万円 | 12,000万円 |
EBITDA | 3,000万円 | 3,000万円 | 4,000万円 |
EBITDA有利子負債倍率 | 6倍 | 5倍 | 3倍 |
前々期は、借入金から現預金を差し引いた残りが18,000万円ですが、EBITDAが3,000万円なので、EBITDA有利子負債倍率は6倍となります。つまり、すぐに返済できない借入金がEBITDAの6年分あるということですね。当期に至っては、借入金が減り、EBITDAが4,000万円に増えているので、3倍にまで少なくなっています。
EBITDA有利子負債倍率は有利子負債の返済能力を表す
話を戻すと、EBITDAは営業利益+減価償却費で計算できましたね。この「営業利益+減価償却費」は、営業活動によるキャッシュフローに近い値になります。
また、営業活動によるキャッシュフローとは、売上げにより獲得した収入から、仕入れや人件費等にかかった支出を差し引いた金額です。つまり、1年間に本業で獲得した現預金の金額であるといえます。
ということは、EBITDA有利子負債倍率は次のように言い換えられます。
そうすると、分母が多ければ多いほど、EBITDA有利子負債倍率は小さくなり、借入金(有利子負債)の返済能力が高いと考えられるのです。
まとめ
このように、有利子負債の返済能力を表すのがEBITDA有利子負債倍率です。金融機関から見れば、EBITDA有利子負債倍率は小さいほうが融資しやすいでしょうね。
借入れを検討されている場合は、EBITDA有利子負債倍率が毎年改善していることをアピールしたいところです。