1.創業スクール選手権
創業への国の補助政策は、創業補助金のように創業者に直接補助金を支給する直接補助ではなく、創業スクール等、創業者の創業スキルをサポートする専門機関に補助金を支給する間接補助にシフトしています。創業スクールでは、事業計画の作成の仕方やマーケティングの方法、税務や資金調達の方法などを学ぶわけですが、学んで終わりというのではなく、ビジネスプランを作成するといった成果物が求められます。各創業スクールで一番優秀なビジネスプランは、各創業スクールの代表ビジネスプランとして「全国創業スクール選手権」というコンテストに送られることになります。
2.表彰されるビジネスプランとは?
それではどのようなビジネスプランが表彰されているのでしょうか?創業スクールは現時点(平成28年11月)まで、2回行われています。この2回で表彰されたビジネスプランのタイトルを見ていきましょう。
第1回全国創業スクール選手権
①本当においしい房総産くじらを独占的に用いたテイクアウトクジラ竜田揚げ&バル
②コーヒーとケーキを通じて安らぎ人との交流の場を提供する
③三重県産小麦と伊賀米粉をベースに地場野菜をつかった薪窯ピザの店を中心拠点とした、田舎体験ツーリズム世界の展開
第2回全国創業スクール選手権
④地域の伝統工芸を活かしたBagの企画製造販売
⑤繋がる!広がる!普遍的個性的ゲストハウス「赤石商店」
⑥「なんと見事な奈良観光」を実現する接客向上支援事業
3.表彰されたビジネスプランに共通するキーワード
表彰されたキーワードを見るといくつかの共通要素を見つけることができます。
(1)地域資源
①の房総産くじら、③の三重県産小麦と伊賀米粉と地場野菜、④地域の伝統工芸、⑥奈良観光、すべて地域資源を生かしたビジネスプランとなっています。この場合の地域資源は、各都道府県の登録地域資源でなくても構いません。
(2)地域コミュニティの活性化
②の「人との交流の場を提供する」、⑤の「繋がる!広がる!」というキーワードは地域のコミュニティの活性化につながるテーマです。②については、「コーヒーとケーキ」というごく平凡な商品なので、普通の喫茶店と何が違うんだという疑問を抱く人が多いかもしれませんが、地域密着型のビジネスで、地元のSWOT分析、現在と未来の商圏競合分析を行った上で、競合との差別化、自身の強みをはっきりとビジネスプランに盛り込んだことが評価されたようです。
(3)インバウンド
③の田舎体験ツーリズム、⑥の奈良観光が該当します。「インバウンド」とは狭義では「外国人の訪日」のことを指しますが、広義の意味としては「迎え入れる」という意味があります。地域の人たちが、自分たちで地域での自然、食、文化等の体験プログラムを作り、外部から旅行客を受け入れるしくみを着地型観光と言います。田舎体験ツーリズムはまさに着地型観光です。
(4)女性
上記のタイトルだけからは分かりませんが、実は6つのうち5つが女性のビジネスプランです。政府は女性と若者の起業を政策的に推進していますので、女性の起業は政策的に支援を受けやすい傾向があります。ちなみに、6人とも若者です。
4.テーマのキーワードが重要
平成28年度の創業補助金の採択テーマを見ると、上記で挙げたキーワードをいくつも発見することができます。ここから国がどのような創業に対して支援をしようとしているかを見ることができます。「地域資源」「地域活性化」「地域の雇用」「地域の課題の解決」「日本伝統文化の新たな活用」「海外への展開」等に取り組む起業を国は支援しています。したがって、どんなに緻密なビジネスプランを作成していたとしても、これらのキーワードと関連していなければ高い評価を得ることができないということになり、ビジネスプランを作成する前の、テーマづくりが重要であることがわかります。
そもそも創業補助金も創業スクールも地域創業促進事業の具体的な取り組みです。創業スクールは各地域にありますし、創業補助金の応募申請には、産業競争力強化法の認定を受けた市区町村の特定創業支援事業に参加することが条件になっています。このように地域と創業がセットになった政策であることを認識してこの事業に取り組むことが必要となります。
5.ビジネスプラン作成に必要な4つの分野
さて、ビジネスのテーマが重要であることを話しましたが、それだけでは不十分です。ビジネスプランではなぜそのテーマを選んだのか、そしてそのテーマをどのように実現していくのかということを具体的に説明することが必要です。そのためビジネスプランには「創業に対する思いと自らの強み」「マーケティング」「オペレーション」「資金計画」という4つの分野に関する記述が必要になってきます。この中でも特に重要なのが「創業に対する思いと自らの強み」「マーケティング」に関する記述です。この2つの分野の具体的な内容については次の記事で取り上げたいと思います。