
1.重要な創業への思い
前の記事でビジネスプランには「創業に対する思いと自らの強み」「マーケティング」「オペレーション」「資金計画」という4つの分野に関する記述が必要で、その中でも特に「創業に対する思いと自らの強み」と「マーケティング」が重要だと説明しました。創業補助金の事業計画書にも全く同じことが言えます。
「創業に対する思いと自らの強み」は創業補助金独特のものです。「ものづくり補助金」等のそのほかの補助金では、「事業に対する思い」は評価の対象にはなりにくいものです。ところが、創業補助金では「事業に対する熱い思い」はとても重要で評価の対象にもなります。なぜなら既存の事業者は実績で評価できますが、創業者はそもそも評価する実績がないからです。起業には強いエネルギーが必要です。事業計画に熱い思いを落とし込みましょう。
2.マーケティングで納得させる
「創業への思い」が情であるならば、「マーケティング」は知です。事業計画書においても、情で相手の心を動かし、知で相手を納得させる必要があります。ビジネスをする以上は思いを形に落とし込まなければなりません。それではビジネスの形とは何でしょうか?商品でしょうか?それともサービスでしょうか?商品やサービスだけではビジネスの形はできません。
ビジネスの形を作るためには、Attention(商品・サービスをどうやって知らせるか)、Benefit(商品・サービスによって顧客にどんな便益を与えるか)、Charge(どうやって課金するか)というABCモデルを最低限作る必要があります。ドラッカーはマーケティングとは販売を不要にするものだと言っていますが、このABCモデルはまさしく販売を不要にするものです。マーケティングを難しく複雑のものとして考える必要はありません。単純にABCが決まればマーケティングはできたも同然です。
3.情と知が決まれば後は行動するだけ
冒頭で「創業の思い」と「マーケティング」が特に重要だとお話ししましたが、この2つが決まれば、あとは行動する、行動する方法を決めるだけです。オペレーションや資金調達などはまさにこれに該当します。
ビジネスプラン(事業計画)の立て方は、旅行プランを決めるのと同じです。私たちは旅行の目的地を決めるのにあれこれ考えるものですが、旅行の目的地が決まってしまえば、あとは旅館や交通手段、予算を決めるだけでそれほど時間はかかりません。
このようにビジネスプランの中にあって、「創業の思い」と「マーケティング」の比重がとても重いものであることが分かると思います。このことは、逆に言うと、「創業の思い」と「マーケティング」がしっかりかけていなければ、そのあとの箇所がどんなよく書けていてもビジネスプランとしては失敗だということになります。
4.採択されるテーマは三方よし
さて、今までビジネスプラン作成の流れを時間軸で見てきましたが、ビジネスプランを面で見たときに重要なのがテーマです。テーマはビジネスプランの顔もっと言えば人格のようなものだといえるでしょう。そしてこのテーマには必須の法則があります。必須の法則とは、「三方よし」であるかどうかということです。
「三方よし」とは近江商人の商売のモットーで「売り手よし、買い手よし、世間よし」というものです。これを今風の言葉に置き換えれば「自分よし、顧客よし、社会よし」ということになります。この近江商人の教えは、商売を長く続けていくためには「三方よし」が必要不可欠であるというものです。そして、このことは今現在つぶれずに営業を続けている事業者は、この「三方よし」を満たしているから存在しているのだということを教えてくれます。
創業者は事業の経験がないため、意外とこの三方よしがわからないものです。「自分よし」とは自分が好きなこと、得意なこと、続けられることです。「顧客よし」とは顧客が喜ぶこと、幸せになることです。「社会よし」とは社会や地域に貢献するということです。自分のビジネスのテーマがこの「三方よし」を満たしているかどうか確認してみましょう。
5.新規参入には新規性が必要
創業者は市場に新規参入者として入っていく立場です。したがって、三方よしを満たすことは必要ですが、三方よしだけでは新規参入の壁を突破することができません。なぜなら、既存の業者がすでに三方よしを満たしながら存在しているからです。したがって、市場の新規参入者として存在感を示していくためには、既存の事業者とは違った新しい要素が必要になります。これが新規性、革新性というものです。
このように、創業者には必ず新規性が必要です。新規性がなければ簡単に市場競争にさらされてしまい、経営基盤の弱い新規参入者は不利な立場に立たされてしまいます。したがってビジネスプランのテーマには必ず新規性を入れることが必要になります。以上まとめると、「成功するビジネスプランのテーマは三方よしと新規性にあり」ということになります。